生まれ変わった鼻血ブー

信長正義の現在、過去、未来。

「今」一本のいいうんこがでる、という幸せ

最近、

事務所に入るとまずベランダを覗く、

ハトのフンがあるかどうか確かめるのだ、

 

カーテンは室内の緑に陽が当たるようにいつも開けているので、

どこも触れずにベランダの床が見れる、

 

事務所に来なかった日の翌日には、

数ヶ所やられているのを見つけてしまうことになる、

 

緊急事態宣言後にめっきり施術の予約が減った、

スタッフが自主的に自粛していることもあり、

この部屋の稼働率はきわめて低い、

手技の講習は現在一件もない、

 

つまり、

1ヶ月以上前に比べるとこの部屋には人の気配が少ない、

そこでポッポたちには絶好の休憩場所になってしまうようだ、

 

この部屋を使い始めたのは去年の6月からで、

痩せたハトが室内にぼくがいようと平気の平左で、

ベランダの金属製の欄干にとまりこちらを向いていた、

 

 ふと下を見ると床面にはフンのあとが散乱している、

密集しているというほどではなかったので数ヶ月そのままで放置して、

ベランダ用にサンダルをサッシ側に斜めに置いて被害が及ぶのを防いで、

それを履いて出入りしていた、

 

痩せポッポが欄干や床面にいるのを見るけると、

地味に威嚇する気を発しながらサッシに近づいて直視し、

それでも怯まない場合は扉をザッと開けて追い立てた、

そのうちこのベランダには寄り付かなくなっていた、

 

それ以上フンが増殖するようなこともなかったのでそのままにしていたが、

ある時ぼくの留守中にスタッフがきれいに掃除してくれて、

次の日覗いたらベランダは当たり前の状態になっていた、

 

その日ぼくはスタッフが施術の入っていない時間を見計らって電話をしたのになかなか繋がらなかったということに腹を立てていたのだが、

ベランダの掃除をしていたと知って恥ずかしくなり、

それから感謝した自分がもっと恥ずかしくなって自分が嫌になった、

 

そうなってみるとその状態が当たり前で、

そうでないことがあり得ないと思うようにもなっていたのだが、

しかし、 

その状態を放置しておかなければならないほど、

ぼくにはハトのふんの手前にいろいろやるべきことがあったのだ!

 

それは、

日々の施術のことだし、

売り上げについて考えることだし、

支払いまでに銀行の残高と入金の差額を知ることだし、

昼は何を食べるか夜飯は何を作るか考えることだった、

 

そして仕事が終わったら、

どこで何の酒を何本買うか、

それが正直最優先のやるべきことだった。

 

 

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酒をやめると選択肢が減る、

 

飲むか、飲まないか、

何を飲むか、

どこで飲むか、

何本飲むか、

まだ飲むか、もうやめるか、、、

 

これは旅行の時に気がついた、

車で移動することが決まっている時は楽だった、

飲む選択肢がないからだ、

 

対して、

電車や船や飛行機で行く時や、

車でも運転しない時などは選択に迫られていて忙しい、

 

常に、

飲むか飲まないか、

どこで飲むかいつ飲むか、

どこで買うかいつ買うか何を飲むか何本飲むか、

いろいろ考え続けて実行しなければならないので、

観光どころの騒ぎではないのだ、

 

景色とか風景とか景観とかを味わうよりずっと手前に、

今まで生きてきてみた光景や情景をアルコールで整えることの方が、

はるかに優先順位が高かったのだと思う、

 

おそらくだが、

「今の状態が整えばもっと楽しめる!」

 とか思っていたと思う、

 

ものごとを深く考えたり、

正面から受け止めるということを、

過去の記憶が整理出来たら、

未来の不安が解消出来たら、

そうしたら出来ると思おうとしていて、

今のところは麻痺させておこうというわけで、

仕事の区切りの隙間はとりあえず酒で埋め続けていたのだと思う、

 

 

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今、この時以外に今はない、

今やれる今がなければ、

いつかやれる今などない、

 

どうしてお酒をやめることができたんだろう、

と考えることがある、

 

たぶん、

死ぬこと以外に確実なことはない、

なので、

今これ以上に何を望んでも無駄である、

とわかってしまったのかも知れない、

 

たった今、

これ以上に過去の出来事を良くしようとしても、

自分以外の何者かになって未来をより良くしようとしても、

今やれることをやらないと

今から現れるより良い未来も過去もない

そういうことだ、

 

たとえば、

売上も貯金も借入の数字さえも、

夢みたいなことに浸っていてもどうにも変わらないのだ、

 

そのためには、

過去を整える酒も、

未来を癒したり増幅したりする酒も、

その「時間」を自分だけのそのための目的に使うとしたら、

次の朝何も変わらない「今」をさらに疲労した肉体で痛感するだけだ、

それだけのことだ、

 

 

事務所に入ったらベランダを見て小さく一喜一憂して、

ヤツが爪痕を残していたら時間をみて掃除をする、

 

掃除の道具も必要なものを選んで購入して、

やり方も自分に最適に改良して、

たったそれだけに満足できる、

以上、おしまい、

 

時間があるから出来ているだけの事かも知れない、

 

でも、

今もお酒の選択に迫られていたらそんな暇はないし、

体と頭のそこここにアルコールと思考の老廃物が蓄積していて、

重力に抵抗するための労力に追われていて、

心の状態の整理には遠く手をつけられない、

 

そうやって日が積み重なって行く、

 

手っ取り早く脳内で得られる幻想の時間の蓄積は、

クリアな頭と体を動かして現した実際からゆくゆく遥かかけ離れていく、

それに気がついたからやらなくなったというだけの話で、

やはり今のぼくに今できる最善を選び続けているとすれば以前と同じことだ、

 

だから、

今は隙間にお酒を入れなくなっただけのことで、

寝て、起きて、食べて、

ハトのフンを掃除して少し人の役に立てたと思って、

そしてまた食べて寝るだけなのだが、

「最近は紙に全く汚れのつかない一本のいいうんこが出るなぁ」

ととりあえず「今」喜べることが少し成長したと思えるのだ、

 

そのうちもっといいのが出るかもしれないけどね、

今はそれだけ、以上、おしまい、

でも、それがいいんだ、